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印象分析士 行動心理・非言語コミュニケーション
Araki Miyo
新木 美代

行動心理 / 非言語コミュニケーション


スピーチイベント「TED」を見て、自分もあんなふうに聴衆を引きつけるプレゼンができれば……と思ったことのある人は多いでしょう。話術が大切なのはもちろんですが、日本人が何かと苦手なのが身ぶり手ぶりです。「非言語コミュニケーション」のスキルが問われているのですが、認識の甘さがあるようです。

誰もが知っておきたい非言語コミュニケーション
「人間のコミュニケーションの9割は非言語の世界である」
読者の皆さんもこのようなことを聞いたことがあるのではないでしょうか。言うまでもなく、広報の仕事とはコミュニケーションの仕事です。私も一応はその道のプロを名乗っているので、非言語コミュニケーションには以前から関心を持っていました。
先日、とある会合で非常に元気の良い女性と話をする機会がありました。いただいた名刺には、こう書いてあったではありませんか。
「非言語コミュニケーション講師 新木美代」
私にとって9割が謎の世界の専門家ですから、いわば「氷山の一角」の氷山の下に潜って、その全てを見てきたという人が目の前に現れたようなものです。この時とばかりに早速リモート会議をお願いし、そこで厚かましくいろいろ聞いてしまいました。
結論を先に言うと、非言語のコミュニケーションは絶対に勉強しておいたほうがいいです。広報として重要なのはもちろんですが、相手との接触のないリモート会議が増えた今の時代だからこそ、全てのビジネスパーソンが知っておくべきだと思います。
好印象で大切なのは「声のトーン」
さて、広報にとって非言語コミュニケーションといいますと、やはり会社の代表者が発表会のステージ上でする身ぶり手ぶりが頭に浮かびます。「TED」のような海外のスピーチイベントに登壇するプレゼンテーションの名手は、誰もが皆、大きな身ぶり手ぶりで聴衆を魅了しているように思います。非言語コミュニケーションとは、要は「あんな感じでやればいいのかな……」と漠然と思って、私もしたり顔で「もっとジェスチャーを大きく」など発表会でプレゼンする社長にアドバイスをしていました。
しかし、新木さんからいきなり痛いところを突かれます。
「非言語コミュニケーションといいますと、すぐ身ぶり手ぶりと思いがちですが、これ、話の内容と合っていないと意味がないんです」
なるほど、確かにプレゼン内容に関係なく昭和の人気コメディアン・せんだみつおさんの「ナハナハ」みたいな動作を延々繰り返している経営者が時々いますね。
リモートの画面越しでは、相変わらず元気いっぱいに新木さんが話を続けます。
「実は人は好印象を持つ相手の話には価値があると感じます。ではその印象ってどこからくるかというと声のトーン。そのトーンに影響しているのが口の動き。口の動きは全身と連動しているので、だからプレゼンは立ってやったほうがいいのです」
ここで1つ疑問が湧いてきました。
「ハーイ先生、質問です。最近は会見もリモートでやることが増えましたが、リモートのプレゼンってどうしたらいいのでしょうか?」
「はい、いい質問ですね。実は今日のこのリモート会議、さっきから私もずっと立って話しているんです」
おおっと、画面越しには新木さんの上半身しか映っていなかったので気が付きませんでした。確かに先ほどからの元気いっぱいの話し方、座ってやってみろと言われてもちょっとしんどい感じのテンションだったので、納得です。
その話、「価値あるもの」と受け止められているか
実は新型コロナウイルスの感染拡大以降、マスコミの行動も少し変化がありました。対面の取材が復活しているにもかかわらず、オンラインの会見が好まれるという傾向があるようなのです。知人が広報をしている某国内大手電機メーカーでは、以前なら会見ともなれば100人は下らない記者が会場に詰めかけていたのですが、最近はリアル会場ではせいぜい10人、あとは皆オンラインで十分ということです。
そうなると、リモートでどうせ顔だけしか見えていないからプレゼンも座ったままでいいや、となりがちです。場合によっては画面に映らないのをいいことに、手元に原稿を置いて、それを読み上げるようにプレゼンをすることも……。
これに対し新木さんは以下のように警鐘を鳴らします。
「この人面白いな、好きだな、と思いながら聞く話に人はすごく影響されます。相手もプロの記者なので、単調なプレゼンであっても、その内容は単なる『情報』としては受け止めていると思いますが、価値あるものとして受け止めていない可能性があります」
なるほどです。だいぶオンライン会見には慣れてきたといっても、まだまだ工夫の余地は残っていそうですね。
今回お話を聞いて感じたのが、広報は取材を受けて仕上がってきた記事(テキスト)から逆算し、文字的にこう言おう、これを言ってはいけない、ということが取材だと捉えがちだということです。まずは「これを強調してください」、次に「これはしゃべらないでください」、そして「できればかまないください」、最後にようやく「可能ならもう少し感情を込めてください」くらいの順番で、スポークスパーソンにアドバイスをしています。発表会直前の最後の最後には、「何なら感情を込めるところはもういいです」くらいのことになっているように思います。
結果「あの人は話がうまくていいよね」「あの人は技術者だからこんなもんだよ」と、あきらめていたりします。
記者の時間を有意義にするのも広報の仕事
しかし一方で、社長なり商品企画責任者なりであれば、当然その会社や商品に対して情熱を持っています。そうした感情を爆発させてあげれば、その人物の魅力が伝わらないはずはありません。心に秘めた熱い思いをすべてアウトさせてあげられれば、プレゼンとして大成功なのだとも思います。非言語コミュニケーションは、こうしたあきらめている「話のセンス」のようなものを体系的に説明し、さらに誰もが身に付けられるトレーニングにしたものです。
こう言うと非言語コミュニケーションは「話し方教室」のようなものだと思われるかもしれませんが、今回私なりに理解したのは、いわば文字情報の上位レイヤーの概念で、決して表面的なテクニックではありません。そして広報として学んでおくべき理由として、新木さんの言葉を最後に引用しておきます。
全くもってその通りだと思いました。
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「記者とて1人の人間であって、媒体に情報を移すための通過点ではありません。大変な中、時間を取ってくれているということを理解し、彼らの時間も有意義で楽しいものにして差し上げる、ということも広報の仕事ではないかと思います」
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